【製紙用製品】インクジェット印刷用定着剤、蛍光消去剤

インクジェット印刷用定着剤

 インクジェットプリンタは手軽にしかも低コストで印刷できるプリンタとして、ビジネス用途・パーソナル用途を問わず、今やあらゆるところでいろいろな団体・企業・個人に利用される印刷機器となりました。その用途はモノクロ文書の印刷に加え、デジタルカメラによる写真画像の印刷、ビジュアルなデザインのカラー印刷等と、さらに広がっていくものと思われます。
 一方、産業界では個人情報や企業情報等の個別情報をフォーム用紙に大量にしかも高速に印刷することが求められており、そういった要望に応えるものとして大型の連続式インクジェットプリンタ(Kodak)があり、現在各所で用いられています。

 インクジェットプリンタでは、印刷インクとして染料あるいは顔料を含んだインクが使われており、インクに含まれる染料としては直接染料や酸性染料があります。含染料インクによる印刷では染料が持つ画像の鮮明さ、精細さといった特徴は活かされますが、印刷物が雨や水性ペンあるいは濡れた手などに接触して印刷物の表面が水で濡れると文字や画像が滲んでしまいます。これは染料が本質的に水溶性であるため、印刷物が水に浸かると染料が水に溶け出すからです。したがって含染料インクで印刷された印刷物を保存しておこうと思えば、水に濡れても大丈夫なように、印刷前か後に耐水性の処理を行う必要があります。

 印刷物に耐水性を持たせるには、予め印刷物の表面にカチオン性物質を塗工しておくのが一つの有力な方法です。染料が水溶性であるのは染料分子が陰イオン(アニオン)基を持っているから、つまりイオン性があるからです。したがって、インクジェットプリンタでの印刷時に、もし印刷物表面上にカチオン分子があれば、インク中の染料分子が印刷物上のカチオン分子とイオン結合します。その結果、染料分子のアニオン基のマイナスがカチオン基のプラスで消去されてイオン性がなくなり、染料は水に溶けにくくなります。もしこのカチオン分子が高分子であれば、染料分子との結合でより大きな分子になってさらに水に溶けにくくなります。そこでカチオン性高分子を予め印刷物に含ませるか塗工しておけば、印刷物は耐水性を持つようになります。

 耐水性の強度は染料分子やカチオン高分子の化学構造・分子量・両成分の濃度、さらには印刷物の物理的・化学的性質など両成分を取り囲む環境や条件によって変化します。印刷インク、印刷物(紙)の種類、紙に含まれる化学成分が違えば、すなわち印刷条件が異なると、より効果的な耐水性を付与するために最適なカチオン高分子の種類、物性も異なってきます。したがって、インクジェット印刷ではケースバイケースで最適のカチオン高分子(あるいはその混合物)の選択が重要です。

 さらにインクジェットプリンタによる印刷で求められる印刷適性は耐水性だけではなく、印刷の鮮明度、発色度、変色があるかないかなども印刷品質を決める重要な課題です。染料にカチオン分子が結合すれば染料分子の光吸収の波長、吸光係数が変化し、印刷物の色調、発色度等、染料の発色性に影響を与える場合があります。カチオン分子を耐水化剤として用いる場合、この発色性への影響は耐水性能とは別に考慮すべき重要な要素となります。また最近では印刷物の保存性を高めるために、太陽、蛍光灯などの光による退色を防止する耐光性や酸化窒素ガス、オゾンガス等酸化性のガスによる変色を防止する耐ガス性の性能も合わせ持つことが要求される場合もあります。一方、産業用の高速印刷では印刷品位に加えて、インクのセット性などが重要な課題になります。

 現在、パソコンやデジタルカメラからのカラー印刷では一般に4色以上のインクが使われていますが、基本の4色に用いられる染料は当然違うものであり、各色に適した耐水化剤も異なってきます。しかしそれぞれのインクに適した別々のカチオン物質を同じ印刷用紙に使い分けることは現実的には不可能なことです。そこでいろいろな種類のインクに対応できるバランスのよいカチオン定着剤が求められることになります。また耐水性以外の他の性能にも優れた品質のものが要求されるとさらに異なったバランスの定着剤が必要になります。こういった事情から多種類の定着剤が開発されるようになりました。

「ジェットフィックス」について

 カチオン定着剤には上に記しましたように、様々なインクに対する耐水性能が求められ、さらに様々な性能を併せ持つことが求められる場合もあります。弊社ではこういった要望に適うべく、繊維産業で長年にわたって培ってきた染料固着剤の技術を生かして、インクジェット印刷用の定着剤の開発に取り組んでまいりました。そしていろいろな御要望に応える過程で各種のジェットフィックスが開発されてきました。

 ジェットフィックスは大別するとKodakインク用(フォーム用紙)とフルカラー用に分けることができます。これは両者ではインクの性質が大きく異なり、また使用目的も異なるため、必然的にそれらに適した定着剤も違ったものになるからです。この2分類の中でさらに細かく分かれた各ジェットフィックスは耐水性、発色性、その他の性能を探求する中から生まれてきたもので、その機能には少しずつ差があります。どのようなプリンタで印刷されるのか、また印刷物のどの機能を強調するかによって適切な定着剤が変わります。すなわち、使用条件ごとにどのジェットフィックスが適しているのかを試験をしながら判断する必要があります。

 以下に各種ジェットフィックスとその特徴、性質を簡単に紹介させていただきます。一度ご検討、ご試験を頂ければ幸いです。

製品名をクリックすると、パンフレットをご覧いただけます。

分類/用途 製品名 特徴
インクジェット印刷用定着剤
/フルカラーオンデマンド印刷用
ジェットフィックス220 直接染料、酸性染料あるいは反応染料を紙に定着させるポリカチオンタイプの染料定着剤です。とくにフォーム用紙用のインクに対する耐水性能において最大限にコストパフォーマンスを追求した結果、一般の定着剤に比べて少量で優れた耐水効果を発揮します。長年に亘って継続して使われており信頼があります。
インクジェット印刷用定着剤
/フルカラーオンデマンド印刷用
ジェットフィックス260 直接染料、酸性染料あるいは反応染料を紙に定着させるポリアミンタイプの染料定着剤です。安価ながらもフォーム用紙、一般のインクジェット用紙を問わず、発色性、耐水性能において効果を発揮するコストパフォーマンスに優れた定着剤です。ジェットフィックス220よりもブラックインクに対する耐水性が強化されています。
インクジェット印刷用定着剤
/フルカラーオンデマンド印刷用
ジェットフィックスN700 直接染料、酸性染料あるいは反応染料を紙に定着させるポリカチオンタイプの染料定着剤です。従来の定着剤と比べて各インクに対する耐水性能に優れた効果を発揮します。従来のジェットフィックスに比べブラックインクとカラーインクの耐水性がバランス良く強化されています。
インクジェット印刷用定着剤
/インクジェット紙フルカラー印刷用
ジェットフィックス90X ポリアミンタイプのカチオン重合物を主成分としたインクジェット印刷用定着剤です。とくに染料インク、顔料インクに対する発色性を向上させるため、よりいっそう改良を加えたものです。またジェットフィックス90Xは染料インクの各色に対してバランスよく耐水性を保ちます。しかも安価でコスト的にも有利な商品です。
インクジェット印刷用定着剤
/インクジェット紙フルカラー印刷用
ジェットフィックス110 直接染料、酸性染料あるいは反応染料を紙に定着させるポリカチオンタイプの染料定着剤です。ジェットフィックス110はインクジェット印刷専用のコート紙用として各色に対してバランスよく耐水性を保てるよう開発した定着剤です。セルロース繊維用の定評のある染料固着剤として広範囲に用いられています。パソコンプリンタ用インクの発色性に優れ、変色が少ないためコート紙に適しています。
インクジェット印刷用定着剤
/インクジェット紙フルカラー印刷用
ジェットフィックス303 直接染料あるいは酸性染料を紙に定着させるポリカチオンタイプの染料定着剤です。染料をよく吸着し、染料が拡散してにじみ出すのを防止する一方、染料の発色性にも優れています。ジェットフィックス240よりも分子量を大きくしたものです。

蛍光消去剤

分類/用途 製品名 特徴
蛍光消去剤 FQ-50 蛍光消去剤FQ-50は蛍光染料の蛍光発色を消去(消光)するのに優れた効果を発揮し、とくに故紙に含まれる蛍光染料に対して消光処理を行なう際には、極めて有用な薬剤です。またFQ-50は塩素フリーですので、環境にも優しい薬剤です。

※上記以外にも、各種ラインナップがございますので、お気軽にお問合せ下さい。